睡眠時無呼吸症候群(SAD)とは?
睡眠時無呼吸症害(以下SAD)とは、睡眠時に呼吸が止まった状態(無呼吸)が断続的 に繰り返される病気です。
その結果、十分に睡眠がとれず、
1.日中強い眠気を感じたり居眠りがちになる。
2.集中力や活力に欠ける。
3.漫然運転や居眠り運転による事故を起こしやすくなる。など、日常生活に支障を及ぼします。
医学的には、呼吸が10秒以上停止する無呼吸の状態が睡眠中に30回以上生じるか、 睡眠1時間あたり無呼吸が5回以上生じるものをいいます。
SADに関する症状
SAD患者には、主に次のような症状がみられます。
・睡眠中、呼吸が止まる 大きないびきをかく ・目覚めた時に頭痛がする 日中、強い眠気を感じる
・寝ている間、頻繁に目が覚める ・熟睡感がない 集中力が低下する
・就寝中、頻繁にトイレに立つ ・目覚めた時に胸焼けがする 不眠症である
・勃起機能不全(ED)である ・肥満である
SADに伴う合併症
SADになると、睡眠時に呼吸が止まっているため血液が固まりやすくなり、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞など重大な合併症を引き起こすおそれがあります。
また、糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化、不整脈、逆流性食道炎のおそれもあります。
SADによる事故
これまでの色々な研究によれば、SADによる居眠り運転で発生する事故は、特に ひとりで運転中、高速道路や郊外の直線道路を走行中、渋滞で低速走行中、朝8時 に多いといわれています。
また、重症のSAD患者による事故は、短期間に複数回生じることも少なくないといわれています。アメリカの調査によれば、SAD患者の事故率は、健康な人の約7倍というデータが 出ています。
病的な眠気の程度を調べる自己診断テスト
SADは、本人が自覚しにくいため、まず眠気の程度が病的であるか次のようなテストで自己判断を行ってみてください
1. 座って読書しているとき | 0:うとうとする(居眠りをする)ことは絶対にない 1:ときどきうとうとする(居眠りをする)ことがよくある 2:うとうとする(居眠りをする)ことがよくある 3:だいたいいつもうとうと(居眠りを)してしまう |
2. テレビを見ているとき | 0:うとうとする(居眠りをする)ことは絶対にない 1:ときどきうとうとする(居眠りをする)ことがよくある 2:うとうとする(居眠りをする)ことがよくある 3:だいたいいつもうとうと(居眠りを)してしまう |
3. 他人の人もいる公共の場所で動かないで座っているとき | 0:うとうとする(居眠りをする)ことは絶対にない 1:ときどきうとうとする(居眠りをする)ことがよくある 2:うとうとする(居眠りをする)ことがよくある 3:だいたいいつもうとうと(居眠りを)してしまう |
4. 他の人が運転する車に乗せてもらって、1時間くらい休憩なしでずっと乗っているとき | 0:うとうとする(居眠りをする)ことは絶対にない 1:ときどきうとうとする(居眠りをする)ことがよくある 2:うとうとする(居眠りをする)ことがよくある 3:だいたいいつもうとうと(居眠りを)してしまう |
5. 事情が許せば、午後に休息をとるために横になっているとき | 0:うとうとする(居眠りをする)ことは絶対にない 1:ときどきうとうとする(居眠りをする)ことがよくある 2:うとうとする(居眠りをする)ことがよくある 3:だいたいいつもうとうと(居眠りを)してしまう |
6. 座って人とおしゃべりしているとき | 0:うとうとする(居眠りをする)ことは絶対にない 1:ときどきうとうとする(居眠りをする)ことがよくある 2:うとうとする(居眠りをする)ことがよくある 3:だいたいいつもうとうと(居眠りを)してしまう |
7. お昼ごはん(アルコールは飲んでいないとして)の後に、静かに座っているとき | 0:うとうとする(居眠りをする)ことは絶対にない 1:ときどきうとうとする(居眠りをする)ことがよくある 2:うとうとする(居眠りをする)ことがよくある 3:だいたいいつもうとうと(居眠りを)してしまう |
8. 車を運転中に、渋滞や信号待ちなどのために数分間止まっているとき | 0:うとうとする(居眠りをする)ことは絶対にない 1:ときどきうとうとする(居眠りをする)ことがよくある 2:うとうとする(居眠りをする)ことがよくある 3:だいたいいつもうとうと(居眠りを)してしまう |
合計11点以上の人は病的な眠気があると考えられ、その原因の1つとしてSADの可能性があります。
ただし、合計10点以下でも家族から睡眠中の呼吸停止や大きないびきを指摘されたり、日中強い眠気を感じたことがある人は、SADの可能性があります。
睡眠時無呼吸症害(SAD)治療の流れ
1.簡単な問診
「SADに関連する症状」や「病的な眠気の程度を調べる自己判断テスト」の結果によって、 自分がSADではないかという疑いが生じた場合には、当センターでは、いびきの大きさ・ 無呼吸の有無・日中の眠気・起床時の熟睡感などについて問診を行います。
2.スクリーニング・簡易式検査
睡眠検査機器(PSG:終夜睡眠ポリグラフ)の簡易型ものを使って検査を行います。
その内容は、一晩寝ている間の無呼吸の回数や動脈血の酸素量などを測定し、精密な検査が必要かどうかふるいにかけるものです(スクリーニング)。
この検査機器は小型で軽量であるため、自宅に持ち帰って検査を行うことができます。
3.睡眠ポリグラフ検査
簡易型PSGで精密な検査が必要と判断された場合には、さらに当センターで一晩かけてPSGによる在宅検査を行います。
これは、体に様々なセンサーを付けて、脳波・心電図・口や鼻からの気流・胸部と腹部の動き・動脈血の酸素量・いびきなどを記録し、総合的に解析するものです。
この検査により、睡眠障害の有無と、SADであるかどうかの確定診断とその重症度を判定します。
※簡易型PSGで重症のSADと判断された場合には、直ちに治療に入ります。
4.診断
1時間に10秒以上の呼吸停止が5回以上あった場合、閉塞性睡眠時無呼吸症候群と診断します。
また、1時間に20回以上10秒以上の呼吸停止があった場合、鼻CPAP(シーパップ)を使用した治療を開始します。
1時間に5回以上20回未満の呼吸停止が起こる中間層の患者様には、マウスピースを使用した治療を提案します。
当センターでは、積極的に鼻シーパップ(持続用圧呼吸機)による治療を行います。
マウスピースに関しては、ふな歯科・光洋台デンタルクリニックと提携し、マウスピース使用時のポリソムノ検査をスムーズに励行します。
CPAP(内科) | 睡眠時に鼻マスクを装着。一定圧力空気を送り込んで気道を確保する。 |
マウスピース(歯科) | 睡眠時に装着。下あごを前方にだして起動を確保する。使えない人もいる。保険適用。 |
外科的な手術(耳鼻いんこう科) | 子供や特定の成人で扁桃腺などが気道をふさいでいる場合は切除。 |
減量(管理栄養士など) | 食生活の指導で肥満を解消すると症状が改善し、消える可能性もある。 |
無呼吸指数(AHI)20以上は保険適用で月一回の通院が必要。
中川循環器科内科OSASセンターでは、全てのCPAPに対し遠隔リモート医療を行っております。
当センターでは、全てのCPAPに対しリモートによる遠隔医療を行っております。
インターネットから自動的に当院にデータが送られ、的確な診断を行うことが可能になっております。
当センターで使用しているCPAPラインナップ
当センターは、患者様に合わせたCPAP治療が出来るよう、CPAPを各種取り揃えております。
RESMED s10
RESMED エアミニ
フィリップス社 ドリームステーション ゴウ
フィリップス社 ドリームステーション
- 睡眠時無呼吸症害(SAD)と高血圧
- 睡眠時無呼吸症害(SAD)と不整脈
- 睡眠時無呼吸症害(SAD)と逆流性食道炎(胸やけ)の関係
睡眠時無呼吸症候害(SAD)と高血圧の関係
また、アメリカの報告によると1時間に15回以上呼吸停止がある患者様が高血圧になる確立は健常者の2.89倍であることがわかっている。
03年のアメリカでの高血圧のガイドライン(JNC7)では、二次性高血圧の筆頭に睡眠時無呼吸症害が記載されている。日本の高血圧のガイドラインにも待たれるところである。
睡眠時無呼吸症候群(SAD)と不整脈の関係
また、SAD患者は上気道が閉塞している間も吸気努力は持続するため、胸腔内圧は著しい陰圧に傾く。
胸腔内にある心臓では、血液が大量に引っ張られ戻ってくる血液(環血液量)が増大し、心臓に負荷(右心負荷)がかかる。そのため交感神経が刺激される。
肺高血圧症と右心負荷と交感神経の刺激が相乗効果で不整脈が誘発される。
睡眠時無呼吸症害(SAD)と逆流性食道炎(胸やけ)の関係
近年欧米で注目されている合併症です。当院でも43.1%の患者様が合併しております。
胸腔内圧の陰圧化に伴い、GER症状が拡大すると考えられています。
auto-CPAPのマニュアルタイトレーションで軽減すると考えています。
心不全関連トピックス(from MedWave)
◆ 2005.7.7 【日本睡眠学会速報】睡眠時無呼吸症候群患者の4割超が胃食道逆流症を合併 肥満であるほど重症
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)患者の4割以上が胃食道逆流症(GERD)を合併しており、特にBMI(体格指数)が25以上の患者ではその頻度が高く、かつ重症であることが分かった。中川循環器科・内科OSASセンター(愛媛県松山市)センター長の中川真吾氏が、第30回日本睡眠学会定期学術集会のポスターセッションで発表した。
OSASとは、睡眠時に上気道が閉塞することにより、無呼吸・低酸素状態になる疾患で、習慣性の激しいいびきや昼間の耐え難い眠気が特徴。交通事故の誘発や仕事の能率低下など社会的影響をもたらす。最近では、高血圧や心不全、脳血管障害との関係も指摘されている。
中川氏らは、OSAS患者40人に対し、睡眠ポリグラフ検査(PSG)と夜間の気道内圧の測定に加えて、QUEST自己記入式質問表でGERDの症状を評価した。さらに、その中でGERDが疑われた症例に対して胃食道内視鏡検査を実施し、GERDの有無を確認した。その結果、OSAS患者40人中17人がGERDを発症しており、合併率は42.5%と高率だった。患者の平均AHI(1時間当たりの無呼吸と低呼吸の回数)は27.8とOSASは中等症で、平均BMIは28.9だった。なお、GERD合併者にH.ピロリ菌感染者はいなかった。OSAS患者40人を、AHI20以上・BMI25以上(A群)、AHI20以上・BMI25未満(B群)、 AHI20未満・BMI25以上(C群)、AHI20未満・BMI25未満(D群)の4群に分類すると、それぞれ25人、12人、2人、1人となった(表)。この中でGERD合併者は、それぞれ12人、3人、1人、1人であり、OSASが重症で、かつBMIが高い方がGERDを合併する可能性が高いことが示唆された。また、17人のGERD合併者の内視鏡所見をGERDの重症度分類(ロサンゼルス分類。グレードA~Dの4段階)に当てはめたところ、今回の調査対象の中で、最もGERDの重症度がグレードCと高かった2人はともにA群だった。さらにグレードBでは、7人のうち6人がA群、残り1人がC群であり、A群で突出して重症患者が多いことが明らかになった。中川氏は「OSASでは、上気道が閉塞した状態で呼吸を行うため胸腔内が陰圧化する。その結果、胸腔内圧は、通常の-5hPa程度から、-40~-60hPaまで低下して胃の内容物が逆流しやすくなり、GERDを発症すると考えられる。この症状は肥満によってより顕著になるのではないか」と話す。また、同氏は、GERD合併者の約3割を占めた肥満度の低い患者については、顎が小さい、奥まっているなど、骨格の形態により気道が狭くなるために、同様の症状を引き起こすのではないかとしている。(富田文、日経メディカル)